1話【出会い】

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客足が少ないのは店のラインナップが悪い訳ではない。祖父が溜め込んだ商品が沢山遺されている。書籍類が主だが小さい骨董店にしてはバリエーションはかなり豊かである。・・原因は営業してるのかどうかすら分からない外観と立地である。昔は栄えていた町だったが主要都市への集中化に伴い過疎化が進んだ。賑わっていた商店街も今は周りは殆どシャッターだらけ。商店街に来るのは地元の高齢者が主。時たまに観光客が来るがこの店の外観の状態では誰も寄り付かない。冬馬自体客足が少ない原因を分かっていない。立地は兎も角、外観は味があると思っている程だからだ。先述した十数人が押し寄せた時は観光客のたわいもない冷やかしSNSが原因だった。 「しっかし今日も客が来ないとなると・・いよいよあのばぁさんに追い出されるなぁ・・。あのばぁさん先月までツケで溜め込んだ10ヶ月分の家賃と交換に物凄く大事にしてた貴重な帽子とマントを国立博物館に強引に寄贈したからな・・。ありゃ寄贈じゃなくて館長と繋がってるだろうけど・・はぁー。まいったなぁ。」 そう言いつつも商品の入れ替えを行う為店舗奥の倉庫部屋で入れ替えする商品を探していた。 ー ーチリンチリン・・ 扉の鐘の音が鳴った。 (んぁ、客か!) 冬馬は本日初めての来客に掛けていた眼鏡を置いたまま倉庫部屋から急いでカウンターについた。 「いらっしゃい!・・あれ?」 店舗スペースは視界を遮る本棚はあるもののスペース自体は狭く小さい為、客が大人であればカウンターからすぐ目に付く筈なのだが、そこには誰も見当たらない。 (おっかしいなぁ。確かに扉の開く音は聞こえたし、節約で清涼関係の機械は動かしてないから、風で鳴るのはありえないのにな。) 「おじさん!ねぇおじさん!」     
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