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冬馬の目に飛び込んで来たのは山積みの本が崩れ散乱し、角に配置していた桐箪笥の扉が不自然に外れ開き、中が見えない造りの木箱の1面が開いていて、窓の開いた隙間から月の光が射し込む暗い部屋の中で一人の少年が桐箪笥を見つめ、へたりこんで泣く光景だった。
「ぐす・・ヒカ・・リ・・ちゃ・・。」
冬馬には聞こえない程微かに漏れる少年の声。
(こんな少年が悪い強盗な訳がない。・・待て、一人?・・いや、確かに二人いた。二人居たはずだ。・・俺が最後に視たのはもう一人があの本を持つ姿・・。何故か記憶が曖昧だが、あれを持ち出されたらマズイ・・っ!)
「君!もう一人は!もう一人はどこに隠れた!どこに行った!」
冬馬はへたりこむ少年の背中に向け強く呼び掛けた。
「・・ぐす。・・あれ?・・ここ・・どこ?」
少年は涙を流しながらもこの場所この状況が分からないといった様子で冬馬の方を振り向く。
「・・お・・おじさん・・だれ・・?」
冬馬は不測の事態に混乱し、少年の言動を理解出来なかった。
周りを見渡す冬馬。不自然に扉だけが外れている桐箪笥。その奥には常人にはただの古い落書きのようにかすれてほとんど読めない程の文字や線、記号の組み合わせのような物が焼き付いていた。しかし冬馬は理解出来た。。
(あれは・・間違いない。しかし・・何故?まさか、門が・・開いた?)
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