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ヒカリの事を思いだし再び涙を流し、虚無感すらある佳輝に説得と落ち着きを与えるため不馴れではあるものの冬馬なりの精一杯の言葉をかけてあげた。
佳輝は黙ったまま。
「しかし渡航するにも本がないんじゃぁ・・。いや、帽子とマントがあればなんとかなるかもしれない。でもあれは今、国立博物館にあるんだよな・・。あー所在地もどこに展示してあるかも分かんない・・。時間がないのにっ!」
考え事が口に出ていた冬馬。
冬馬は携帯すら持っていない。勿論パソコンなんてハイカラの物はない。国立博物館の場所を直ぐ調べる術がなかったのだ。
「・・分かる。分かるよ!おじさん!博物館の場所!多分帽子もマントも!」
押し黙っていた佳輝が思い付いたような表情で冬馬に話す。
「えっ本当?・・い、いやダメだ。もう夜も遅い。親も心配してるだろうし、これから博物館に忍び込むんだよ。僕の店に忍び込んだ事は目を瞑るからこれ以上悪いことに足を突っ込んじゃダメだ!」
冬馬は一瞬希望が見えたように思えたが冷静に考え、子供に危険な目に合わせないために必死に止めた。
しかし、
「役に立つから!お願い!連れてってよ!おじさん!」
佳輝は食い下がらない。
「ダメな物はダメだ。大人の言うことを聞きなさい!」
冬馬はそれでも拒んだ。
それでも食い下がれない佳輝は瞳を潤わせ力強く言った。
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