episode Ⅹ

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「貴女の場合は、ピッタリと身体にフィットしたTシャツの上からでも分かるほど鍛えられた前腕筋群、僧坊筋、大円筋。これは、ロッククライミングで主に鍛えられる筋肉です」  単なる学校の勉強や政治経済の知識だけでなく、スポーツと筋肉の知識まで持っている洋一郎の博識加減に改めて感心する。 「それと、両方の掌と親指の第一関節にある職人ダコ。おちゃらけた雰囲気を出しながらもサングラスの奥では鋭く周りを見渡している。そんな人、一般人には中々いませんよ」  洋一郎の観察力に皆が感嘆の声を小さく漏らす。 「それに、タカシさん。無駄のない筋肉は相当鍛えていますよね。日焼けもしていますし、最初はスポーツマンか力仕事をしている人かと思いましたが、左肘にアザがあるのを見て見方が変わりました」 「そんなコトで?」 「はい。確か僕達が産まれる前に制作された映画で、主人公がある男の左肘のアザを見て、狙撃手だと見抜くシーンがあったんですよ。初めはどうしてそんな事で判断出来るんだと思いましたが、なんでも、狙撃のためにひじを地面につけている為、左肘にアザが出来るのだとか」  大介は首を伸ばし、克也はシートベルトをしたまま大きく身体を通路側に出しタカシを見た。
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