episode Ⅳ

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「勿論、友人は抵抗したが、男は薬の効果なのか力も異常に強く、逃げる事も叫ぶ事も出来なかった。生きながら顔面を半分以上喰われた所で、ようやく近くを通りかかった人間が通報したのか、警察がやって来て、男は射殺されたらしい 」  勉強だけでなく、世界のニュースまで細かく記憶しているようで、まるで台本でも読んでいるかのように、洋一郎は淡々と語る。 「顔面を喰われた男は運よく生きていたが、その男が同じように人を襲うっていう事は無かった。けどな、他にも、同じ系統のクスリを使った女性が、自分の赤ちゃんを殺し、脳を食い散らかした例や、突然、狂ったように近くにいた人を襲った例もあるんだ」 「でも、それはゾンビじゃなく、ただ薬物中毒で凶暴化しただけだろ?」  俺が率直な意見を述べると、洋一郎は小さく肩を竦めた。 「確かに。これらの事件は単なる薬物中毒者の凶事だとしか思えない。だがな……」  彼は言葉をそこで切り、俺の顔をしっかり見据えた。 「この事件があった“場所”が問題なんだ」  真剣な表情で勿体ぶるような言い方をする彼に、少し苛立ちを覚えたもの、その話の続きが気になる。
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