episode ⅢⅩⅡ

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「四十五分っ?」  素っ頓狂な声で叫ぶ鶴岡も、やはりそもことに気が付いていた。 「そうそう。時間がないから、軍用車で暴走しちゃった」  テヘヘと笑うアラフォー男。  全くもって可愛くない。  呆れたような視線を向けるが、彼はそんなことは全く気にせず克也に満面の笑みを見せた。 「でさぁ、カツヤくん。君にniceな土産を拾って来てやったぞ」 「土産?」 「あぁ。暴走途中で道に大きな捨て犬が二匹いてな。可哀想で拾って来た。時間が無いっていうのに、優しいだろぉ? ボクチン」  彼が拾って来た『犬二匹』に胸が高鳴る。  期待してはいけない。  期待して違っていたら、ショックがでかい。  それでも、大きな犬二匹といったら、アイツらしか考えられない。 「そんなに目を輝かすなよ。綺麗なワンコじゃないぞ? ズブ濡れ鼠といった方が当たっているかもしれん」  彼の言葉に確信する。  間違いない。 「そ、その二匹は今どこに?」  本郷に詰め寄れば、彼が乗って来た軍用車の後部ドアを開けた。 「ただいま」  照れ臭そうに頭を掻いて、車から降りて来たのはずぶ濡れになった大介。  それに続いて、座席から飛び降りるボン。 「ウォウォンッ」  最後に見た時には、返り血を浴びたり、口を真っ赤に染めたりして、勇ましいを通り越し狂犬のようだった姿は、川に落ちたお陰(?)で、汚れが綺麗に洗い流されていたものの、激しい戦いと川に落ちた時に足を打ったのか、後ろの右足をヒョコッヒョコッとあまり地面に着けないようにしている。 「ボン、大丈夫か?」  足を触り、確認してみるが、どうやら骨折はしてなさそうだ。 「川に転落した後、ボンがアイツの手を何度も何度も噛みついて緩んだ隙に、オレの首根っこ咥えて、泳いで岸まで運んでくれたんだ」  頭を撫でてやりながら、誇らしげにボンの武勇伝を語る大介。  鶴岡は目に涙を浮かべ、本郷も目を真っ赤にしてその光景を暖かく見守っていた。
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