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港町の天下無双
辺境の島から辿り着いた港町フェルカンは大きな町ではないが、それなりの規模を誇る海運の要衝だ。北へ3日ほどの所には近隣では最も大きな街があるので、この港町はそこの玄関口といった意味合いの方が強い。また、海流の影響もあってか、辺境と気候には大差ないようだ。
マルコたちと別れたゼルベルトはさっそく船着場から町の中に向けて倉庫街を練り歩いていた。前を全開にした赤いシャツを羽織った強面の彼は妙な存在感の強さを放っており、そのつもりはなくても否応なく目立っていた。荒くれ者が多い港町においてその様な目立ち方はトラブルを招くだけだろう。だがゼルベルトに悪気はなく、極々自然体で不穏な視線もどこ吹く風だ。
時刻は昼時で船上では何も口にしていないゼルベルトは、大層腹が減っていた。ぎゅるるると豪快な音を立てる腹を気にしながらメシ屋を探している。
「……まずは腹ごしらえといきてぇな。なんでもいいからどっかにねぇか」
倉庫街の中にメシ屋はないようで、きょろきょろしながら町の方まで歩くと、年季の入った分かりやすい料理店があるのを発見した。
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