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「腰の獲物は飾りか、おい! そいつを使っても誰も文句は言わねぇぜ。ハンデだよ、ハンデ!」
何度か殴られながら考え事をするようにしていたゼルベルトだが、その声を聞いた途端に怒鳴り声を上げた。
「バカ野郎! 男が喧嘩でンな尖ったもん振り回せるか! 男の武器はコレとコレで十分だろうがっ!」
己の拳と心臓を示しながらそう言い放つ姿は迫力満点で男気に溢れており、周囲の視線を釘付けにする。それはゼルベルトを舐めきっていたボーデヴィンも例外ではない。
「おっと、男の武器はコレもあったな!」
次に股間を示したマヌケな姿で全てが台無しであった。
「ふざけた野郎だぜ」
「おう! おめぇ、ボーデヴィンとか言ったな。こっからはよ、今まではちっと違うぜ」
無造作に近づいたゼルベルトは目にも留まらぬ拳を繰り出し、喧嘩自慢のボーデヴィンを一撃で気絶させた。しかもきちんと手加減してある。彼が本気で殴れば殺してしまうので当たり前であるが。
「よっしゃ、体があったまって来たぜ。どんどんこいよ、こんなもんじゃねぇだろうがよ! 海の男ってのはよっ!」
興が乗ってきたゼルベルトに、乗せられた漁師たち。店主が天を仰ぐ大立ち回りは夕暮れまで続けられた。
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