港町の天下無双

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 しかし運命神は今日も悪戯好きだ。何者かを探す女の気配は着実にゼルベルトに近づいていく。そしてついに、彼女は彼を見つけてしまった。全裸でしゃがみ込む男のことを。 「……き、」 「バカ野郎! 覗くんじゃねぇよっ!」  悲鳴を上げられる前に先手を打って怒鳴りつけるゼルベルト。あくまでも相手に非があると思わせる良い作戦だ。 「の、のぞいてなんていませんっ! それに、ど、どうしてこんなところで裸で、し、しかも、その、し、しているんですかっ!?」 「急にもよおしまったんだから仕方ねぇだろうよ。それともなにか、俺に漏らせって言うのかよ」  何が悪いと開き直ったゼルベルトだが、無遠慮にも隠れた人間に近づこうとする方がおかしいとする主張は、あながち的外れではないだろう。  そこで初めてゼルベルトは相手の女をちゃんと見た。  年はきっと同じくらいか少し下になるだろうか。漆黒の髪は真っ直ぐに長く、よく似合う銀の髪飾りで耳の上で留められている。柳眉に印象的な藍色の瞳は多くを語りかけてくるようで目が離せない。赤い唇は輝くような白い肌と相まって酷く蠱惑的だ。薄い生地で抑制的な露出を抑えた服装は、彼女のメリハリのある体型を逆に際立たせている。  あえて言おう。美しくも真面目そうな顔に似合わないドスケベボディを持った彼女の姿は、脳天を貫くような衝撃を彼に与えていた。     
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