港町の天下無双

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「……あっ!? そ、そうです! わたくしの従者たちが、たくさんの魔獣と戦っているんです! その、手を貸していただけませんか!?」  沢の近くに置いてある仕留めた魔獣の多さから、彼が腕利きであることは察しているのだろう。まさかその狩りの成果がたった一人のものとは思わなかったようだが。 「なにっ!? それを早く言わねぇか! 場所はどこだよ!?」 「でも、たくさんいるんです! あなた一人では」 「うるせぇ! いいから案内しろ、俺が何とかしてやる」  山の中では助け合いが基本だ。ゼルベルトは辺境の教えを忠実に守り、出来る限りのことをする気構えがある。彼の迫力に一瞬息を呑んだ彼女だが、自信に満ち溢れた様子や他に当てもないことから、謎の男に助けを求めて案内することを決めた。  彼女は頼りない足取りながらも懸命に山道を進んでいく。ゼルベルトは密かに感心しながら前を行く彼女の尻を舐めまわすようにガン見していたが、幸いなことにそれを見咎める者は誰もいない。じっくりと脳裏に刻み付ける。  時を忘れて思う存分健康的な尻の動きを堪能していると、いつの間にか戦闘音が微かに響く場所に到達していた。かなり遠くの前方にある大岩の向こう側がそうだろう。まだ戦闘音が聞こえるということは、健在な者がいるはず。全滅という最悪の事態は免れたのだ。     
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