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場所さえ分かればもう案内は必要ない。彼女一人を置いて先に行くことは少しばかり気に掛かったが、彼女は一人で山中を歩いてゼルベルトを探し当てるような破天荒さを持っている。さらに道々で垣間見せた気丈さなどを見ても、少々の魔獣程度に遅れを取るような弱々しい女ではないのだろう。腰に差した小剣はきっとただの飾りではない。
ならば、余計な心配は無用。ゼルベルトは一気に加速すると、風のような速さで彼女を追い越して大岩の向こう側に姿を消した。
そこからは一方的な蹂躙劇が始まった。
まずゼルベルトが目の当たりにしたのは、剣に鎧と盾を身に着けた何人かの神殿騎士たちが、薄い抑制的な服を着た侍祭たちを中心にして囲んでいる姿だった。
神殿騎士は小型の愛玩動物を凶悪にしたような魔獣の攻撃から必死に非戦闘員を守っているのだ。既に倒れている騎士や侍祭も何人もいて、ゼルベルトが駆けつけるのが遅れれば、遠からず全滅していたかもしれない。倒れている者は、手当てを受けられる暇もなく、なんとか陣地に引っ張り込まれてはいるようだが、容態はどうなるとも知れない。
ゼルベルトはそれを横目にしながら魔獣の群れに単身飛び込む。今回は狩りではなく、ただ魔獣を蹴散らせばいいだけだ。なんの遠慮も要らない。普段であればもっと慎重に行動するところだが、今はそんなことをしている場合ではない。
「うるせぇ鳴き声だ。いくぜ、畜生どもっ」
彼が殴れば小型の魔獣は絶命しながら簡単に吹き飛ぶ。蹴り上げても同じ結果だ。
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