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凶悪な魔獣とは思えないような情けない鳴き声を上げながら魔獣どもは蹴散らされいく。
だがゼルベルトも多勢に無勢だ。周り中から引っかかれ、噛み付かれては無傷とはいかない。黒革のズボンをはいた下半身は無傷であったが、上半身は傷だらけになってしまっている。傷はどれも浅いが出血は免れない。ゼルベルトは自身の血に塗れながら、鬼神のように獰猛な笑顔を浮かべながら敵を次々と排除する。
突如現れた孤高にして強力無比な援軍に歓喜したのも束の間、余りの実力に恐れおののく神殿騎士と侍祭たち。だが彼らが警戒するのは当然だ。何者とも知れない男が、次に牙を剥くのは自分たちかもしれないのだ。一時的に助かったからといって、油断していいものではない。
「なんなのですか、あの男は……」
神殿騎士たちは周囲にはびこる魔獣を警戒しながらも、謎の男から目が離せない。その圧倒的に力強く猛々しい在りようは、目を惹きつけて離さない。魔獣の撃滅への援護も忘れて、ただ彼の戦いを見つめるしかなかった。
まさしく怒涛の勢いで次々と魔獣を排除していくと、魔獣はようやく勝てない相手と悟ったのか、どんどん逃げ出していく。ゼルベルトもわざわざ追いかけるようなことはしない。彼が到着してからほんの僅かな時間での逆転劇であった。
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