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辺境の天下無双
ギラギラと輝く太陽に青々と茂る草木。熱帯を思わせる蒸し暑さに包まれた山中。
そんな中を年頃の若い男が、酷く慌てた様子で駆け抜けていた。
血走った目に苦しげな表情、ただ汗をかいているだけではなく、脂汗に塗れているようにも見える。その焦りようは、何か大きな事件の起こりを想像させる。ただ事ではない。
「ぐおおっ、畜生、もう間に合わねぇ! クソッ、しょうがねぇか!」
大きな声の独り言を叫びながら、山道を少し外れた草むらに飛び込む。近道であろうか。
しかし急いでいたはずの男は草むらに入った途端に立ち止まり、カチャカチャと音を鳴らしながら大急ぎで腰のベルトを外すと、なんと下半身を露出したではないか。
さらにはそのまま座り込むと、生理現象の発露を始めてしまったのだ。
「ふんぐっ! くぅっ、はぅ、ふんっ! うぅ、ふぃ~、間に合ったか。はあ~、危なかった」
何のことはない。ただの脱糞だった。
「ああっ!? しまった、紙がねぇ! クソッ、誰か来ねぇか」
男が草むらから首を伸ばして周囲を見渡すと、運の良いことに遠くから向かってくる一人の少女が見えた。
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