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がっちりと握りしめられていた手をほどき、縁は自分から伊住の手を握った。
「急に伊住くんなんて、馴れ馴れしかったかな」
数秒ほどの間の後、ぽかんと口を開けて放心していた伊住が「そんなことありません!」と勢いよく答えた。軽く握手していただけの手を激しく上下に振るものだから、あまりの力強さに縁の身体は上へ下へと引っ張られてしまう。
「これから好きなように呼んでください。佐々木さ……縁さん!」
「わ、わかった、わかった、から、ちょっと、おちつ、落ち着いて!」
「うわっ、すみません、俺……!」
伊住がいきなり手を離したことで、今度はバランスを崩してしまう。前のめりに倒れるようにして伊住の胸に飛び込むと、ピンク色のエプロンと『リリー』のロゴが縁の眼前まで迫っていた。
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