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「操さぁ、ちょっと真面目な話があるんだけど聞いてくれるかな?」
操は今までに見せた事のないような不安げな表情をしながら俺の目を見つめている。
そんな操の顔を見ているだけで胸が押し潰されそうだった。
「秀ちゃんがそんな顔をするなんて、本当に大切な話なんだよね?……私は大丈夫だよ…」
「そうか…それならいつもの公園でいいかな?」
二人で手を繋いでいつもの公園までぽつりぽつり歩いた。
やけに夕焼けが綺麗な日だった。
二人でブランコに並んで座り、俺の不思議な二重生活の事を正直に話したんだ。
「なんて説明すればいいかな……
何て言えば分かってもらえるか……」
俺の話を聞いた操はしばらく下を向いて黙っていたが、サンダルを履いた足で軽くブランコを揺らすと口を開いた。
「秀ちゃんが作り話をするなんて考えた事もないよ。全部本当にあった事なんだよね…」
「信じてくれるのか?」
そして、俺はもう一つの家族にも二人の子供がいる事、夏子が亡くなった事。
そして、夏子との最期の約束の事も正直に話したんだ。
操は前を見つめたままポロポロと涙を溢した。
「秀ちゃん、辛かったでしょう……」
「だけど俺はお前達じゃなく……」
「秀ちゃん、言わなくていいの!いっぱいいっぱいいっぱい悩んで出した答えだもんね。」
「正直、俺にも何が本当なのか、これが現実なのかさえよく分からないんだ……」
「秀ちゃん、全部本当だったんだよ。
夏子さん達との生活も、あたしと秀ちゃんが出会って結婚した事も。ひとみと健太を授かってお義母さんと5人で楽しく暮らした事も全部……
私達、秀ちゃんのお陰で本当に幸せだった。
秀ちゃんが誰より優しい事も知ってるよ。
だから……
秀ちゃんが出した答えで間違いないんだよ…
あたしもまだまだ働けるしお義母さんも元気でいてくれる。ひとみと健太は必ず立派に育てるわ!
でも、絵理奈ちゃんと翔太君には秀ちゃんしかいない。
ひとみと健太にはあたしが言い聞かせるから大丈夫!
近くに秀ちゃんがいなくても、誰も秀ちゃんの事を忘れないし、想い出も消えないわ。
秀ちゃんはもう一つの家族を一生懸命守ってあげて!」
操は昔からそうだった。
とにかく自分の事より他人の事を優先するヤツだった……
今度は俺の涙と鼻水が止まらなくなった。
二人でブランコを降り、辺りが暗くなるまで抱き合っていた。一言も話さずに……
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