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その日以降、気付けば彼を目で追っていて、ぼんやりしていて素っ気ない人かと思っていた印象は、次第に変わっていった。 誰も気付いていないゴミを無言で拾って、ゴミ箱に捨てたり、前の席の子が落とした消しゴムをそっと拾って、机に戻してあげていたり。 中野くんはいろんなさりげない気配りを見せるのに、まるで目立たないように意識して行動しているみたいだった。 だから、誰も彼の優しさに気付かないのだ。 そうして、見ているうちに、私も気付いた時には目立たないように、中野くんがやっていることを真似するようになっていた。 そう行動する度、彼と目が合うようになったのは、気のせいじゃないと思いたい。 でも、必要以上に、お互い話しかけることはなくて、仲良くなる方法が分からないでいる。
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