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「日南子、おはよう」
「おはよう」
文化祭を目前に控え、どこか浮足立った教室に、朝の挨拶が飛び交う。
私、高橋日南子もその中の一人だ。
高校一年の秋。
高校生になって、初めての文化祭を如何に楽しむか。
みんな、そんなことばかりが頭の中を占めている。
廊下側の後ろから二番目にある自分の席に着き、教科書なんかを机にしまっていると、一人静かに入ってきた男子に気付いた。
中野大翔くん。
物静かで一人でいることが多い彼が、今、私が気になっている人だ。
近くにいた男子に声を掛けられても、短く返事をしただけで、すぐに窓際の一番後ろの席に座ってしまった。
そわそわした空気の中、中野くんだけが淡々とした空気をまとって浮いていた。
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