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「優しいっていう言葉と中野くん、全然結びつかないんだけど」
「本当は優しいんだよ」
「ふうん」
まったく納得していない様子の奈々は、チャイムと同時に入ってきた担任に気付いて、前を向いた。
いいんだ。
彼が優しいことを知っているのは私だけで。
長い前髪を鬱陶しそうに掻き上げた瞬間に見える目が大きくて綺麗だということも、私だけの秘密にしておきたい。
どうして、そんなことを思うんだろう。
私が彼を気になり始めたのは、入学して間もない頃にあった出来事がきっかけだった。
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