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「何怒ってんのよ?」
首をかしげながらも、えんがわとたまごやきをピックアップする。
「ああ、」
思いついたのか、ちょっとわらう。
「俺が誰ぞにプロポーズするとでも、思ったか」
「違うの?」
あたしは空の湯のみを両手でかかえ、立ち上がりそうになった。
「バーカ、俺が女に貢ぐかよ。貢がすことはあっても、貢ぐことはありえませんて」
小学六年生のめいにどんなじまんだ。
「言わなかった? この指輪は調査で使うんだよ。あとで依頼主に清算してもらう。ちゃんと領収書ももらったろ」
「なんだ」
あたしは湯のみを、ことんと置いた。
「で」
ひぐっちゃんは、あたしの顔をのぞきこんだ。
「なんで、お前が怒るの?」
そこで、口にこぶしをあててわらった。
「悪いけど、伯父さんと姪は結婚できないよ。俺のお嫁さんはあきらめろ。憧れるのは無理もないけどな。ま、愛人ならいいけど、整理券とって列に並んでよ。今、77番ぐらいだから」
またイラっとした。重なったお皿をまとめて、口につっこんでやろうかと思った。
どうして、こういう無神経なことがいえるのか、この男は。
「なに、カンちがいしてんのよ。そんなの一ミリもありえないから。あたしは、ひぐっちゃんがヘンな女につかまって、おばあちゃんやおじいちゃんに、めいわくかけたらいやだと思ったの!」
それを聞くと、ふまんそうな顔になった。
「なんで、ヘンな女限定なのよ? 俺の彼女たちは全員レベル高いんだぜ」
じょうだん、ばっかり、いってんなよ。
かみしめた歯の間から息をはきながら、あたしはゆっくりいった。
「だって誰かさんは、本当に好きな人に好きっていえない、いくじなしだからだよ」
とたん、ひぐっちゃんはだまってしまった。
急所をつかれて、子ども相手にごまかすこともできない。
あたしはそっぽを向いた。同レベルで口げんかしているのがばかばかしくなってきた。
ぷんぷんおこりながら、注文ボタンをおした。
「大トロと、ボタンえびと、こぼれウニ、全部ダブルで!」
きっぱりさけぶと、ひぐっちゃんは弱々しくわらおうとした。でも、できなかった。心の中では、おなかに矢がささってどくどく血の流れている落ち武者だったから。
「バカ、小学生がそういうオーダーすると、ナマハゲに連れ去られるんだぞ、罰当たりが」
「ここ、なに県だっつうの」
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