凡庸のロマンス

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渋澤の家に訪れるのはこれで2度目となる。 渋澤を先頭に3人は渋澤の住むアパートの前に立っていた。 笹本の目の前で渋澤が部屋の鍵を開ける。 「散らかってますけどどーぞ」 「お邪魔します」 小泉は律儀に挨拶して脱いだ靴を揃えている。 先に入った渋澤が部屋の明かりを点けた。 「おわ。本当に散らかってるんですね」 小泉が感心したように声を上げた。 「人を呼ぶなんて想定してないからな」 笹本はきょろきょろとお世辞にも綺麗とは言い難い渋澤の部屋を眺める。 小さなローテーブルの上には食べ終えたカップ麺の空き容器が置きっぱなしで、床には飲み終えた空のペットボトルや漫画雑誌が数冊無造作に置いてある。 以前泊まった時も同じような光景を目にした記憶があった。 「カップ麺ばっかり食べてちゃ体によくないよ」 思わず笹本が口を開く。 自炊しろとまでは言わないが、カップ麺ばかりでは栄養が偏ってしまう。 渋澤がどんな食生活を送っているのかは知らないが、少しばかり心配に思った。 「気になるなら笹本さんが作りに来てくださいよ」 「別にいいけど」 「まじで?約束ですよ」 笹本は頷きながらキッチンへと目を向けた。 キッチンのシンクには今朝使ったであろう食器が洗い桶の中、水に浸して置いてある。 どうやらカップ麺ばかり食べているわけではないのかもしれない。 バルコニー側のガラス戸のカーテンレールには、下着やTシャツなどの洗濯物が吊るされたピンチハンガーが引っ掛けられていた。 ─ちゃんと生活してるんだな……。 もっとがさつでダメな暮らしをしているのかもと勝手に想像していたが、部屋が少し乱れているのも生活感があって少しもおかしなことではない。 これで生ゴミの匂いでもしようものなら、取り敢えず掃除しようかと提案するところだが。
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