見知らぬ同居人

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 おっそいなあ。  腕時計を見つめる。腕にかかっている傘は開いている状態よりもたたんでいる状態の方が重く感じて、やはり折り畳み傘にしておけばよかったと後悔する。  時計の針は18時29分を指していた。  デパートの前に設置された時計台の前には子ども連れの家族や学生にサラリーマンなど、多くの人がそれぞれの目的地を目指して行き交っている。  通りの奥の方から雑踏にまぎれながら「由紀~!」と手を振ってこちらへ駆けてくる女性が目に入った。  聞き慣れた声とその仕草ですぐにそれが有村楓であることが分かった。 「楓、あんたおっそいのよ」 「それ毎回言うけど、由紀が早いんだって」  楓とは中学の頃からのくされ縁のような関係だが、会えばいつもお互いにこの調子だった。  待ち合わせと聞けば15分前にはその場所についていないと落ち着かない私と、待ち合わせ時間に家を出ても平気な顔をしている由紀は、性格的には真逆のようでいて時間感覚以外は不思議とウマが合うのだ。
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