見知らぬ同居人

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 由紀と私はその場で軽く近況を話し合ったあと、近くのレストランで食事をすることにした。 「最近よく誘ってくれるけどさ、なんかあった?あ、もしかしてまた男にフラれた?」  楓がフォークでパスタを回しながら聞いてくる。 「またって何よ」 「やだ、図星?」 「そんなんじゃないって。家に帰れないだけ、夜の8時まではね」  楓のフォークを回す手が止まった。 「なにそれ?」  怪訝そうな顔をこちらに向けてくる。 「いまルームシェアしててさ。他の人と一緒に住んでるんだけど、お互いに部屋を使える時間を区切って生活してんのよ」  私は現在の状況を簡単に説明した。 「でも同じ家に住んでるんでしょ?」 「とは言っても部屋は別々だし、部屋には鍵もついてるから実質一人暮らしみたいなものなんだけど、生活時間を分けるっていうことで余計な干渉とか気遣いをなくすシステムらしくて、私が部屋を使える時間は夜の8時から朝の8時まで。ってことで今こうやってあんたと晩御飯を食べてるわけ」 「じゃあ一緒に住んでるのに同居人と顔を合わせることもないんだ」 「そう。ていうか住んでいる人の顔どころか名前とか性別も分かんないのよ。不動産屋はお互いに相手の情報が一切ない方が安全だって言ってたけど」 「でもどうすんの、盗聴器とか仕掛けられてたりしたら」  実際、防犯面に不安がないわけではなかった。しかし家賃の安さと現在の仕事場から近いという利便性から、申し分のない物件にも思えた。 「大丈夫よ。入居前に結構念入りに身元の確認とかしてたし」
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