アムリタの告白(1)

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「そうですね。ニタリが一匹、遊びに来てくれました」 「ニタリって何?」 「ベッキー、それ前も聞きましたよ。サメです」 「あー、そうだったね。アムリタはサメが好きだもんね」 「はい。おっきくてちょっと丸くて、ギザギザしてて、とにかく格好いい魚が大好きです」  クラクラしてくる。これが最近のAIの返事?個性丸出しもいいところだ。サメ好きとか聞いたことがない。マルコの困惑をよそにベッキーはひょいとモブを渡す。 「はい。これ、OSのバージョン上げておいてね。古いのはセキュリティパッチ当たらなくなるから」  言葉を圧縮できる技術でも持っているのか。マルコがモブをしまうまでベッキーはアンチウイルスソフトのトレンドについてまくし立てる。  情報分野に対しては人並みに知識があると自負していたマルコでも、ベッキーの話は殆ど理解できない。それほどに高度で、熱心なものだ。  だからだろう、ベッキーは聞きもしないのにアムリタの解説も始める。 「やっぱりうちの子は競合企業が作ったAIよりも間違いなく優れている。アムリタはね、とーっても思慮深いのよ」 「思慮深い」  マルコは表現を繰り返す。ベッキーは大きく頷いた。     
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