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「そう。今、自分が発しようとしている返事が正しいかもう一度考えることができる。アムリタはね、「本当に?」と自分を疑うの。今までのAIにはない画期的な発想よ」
「……どうやって実現したんだ?」
「え?、それ聞いちゃう?」
ベッキーの破顔に応えるように、ひときわ雨が激しくなった。窓どころか石造りの壁全体が風に揺さぶられている。
二人は視線を絡ませあったが、しじまは長くはもたなかった。
「まあいいわ。あなたの口の硬さは折り紙つきだから。正体はちょっとした機能追加よ」
通常、AIはユーザの発言を解釈し終わると、回答候補を用意する。それぞれの回答に対し、「言えばユーザをどれだけ満足させるか?」という期待値を計算しする。そして最も数値の高いものを発言するのだ。シンプルなアルゴリズムに従って、黙々と情報を処理する。
「ただし、アムリタは回答期待値計算の後にもう一度、吟味をするの。私は『直感係数を掛ける』って呼んでいるけどね」
「直感?…あて勘ということか?」
理性の対極にある概念だ。0と1で作られたAIらしからぬ言葉だ。
マルコの問いに、ベッキーは唇を横いっぱい広げるように笑った。
「そ。でも案外これが効いてくるんのよ、案外ね」
狐につままれた気分だ。
同意すべきか否定すべきか迷ってしまう。始めれば、議論は長くなるだろう。
断ち切るためにもマルコは尋ねた。
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