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「話が遠回りだな。口の固い神父と一体なんの関係があるんだ?」
「遠回りだって!?とんでもない!」
胸に届く長さのある髪が大きく揺れる。ベッキーは細い眉を吊り上げる。口は笑っている。話に乗りきれていない元・猟兵中隊の様が面白かったのだ。
「も?、マルコ?、これはストレートに本題なのよぉ?」
「冗談は勘弁してくれ。どこがだよ」
煽るように語尾を上げてくるのがいけない。マルコはつい地金を出して粗野な言葉を返した。
ふふん、とベッキーは鼻を鳴らす。
「アムリタは神父を求めてるの」
一瞬、マルコは何を言われたのかわからなかった。
したり顔のベッキーに確認する。
「なんだそれは?どういうことだ?」
「だから、アムリタは『神父様に懺悔を聞いてほしい』って言ってきかないの。緊急事態でしょ?これは」
緊急事態という割に面白がっている顔だ。
マルコはぽかんと口を開けた。〝動揺は死に繋がる〟。入隊時から叩き込まれていたはずだが、耐えきれなかった。
間抜けに見えているだろうなと頭の片隅で思いながら、感想を述べる。
「…………そんなことってありえるのか?」
今更ながらベッキーにライト・デイの後遺症が始まったのかと疑うほど、それは突飛な発言だった。
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