アムリタの告白(1)

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 アメリカ。ジョージア州、アトランタ。南部のMITと呼び声高いジョージア工科大が籍を置く街だ。学生の起業も多く、街全体がIT関連の事業で盛り上がっている。人材流出の激しいシリコンバレーとは何もかもが対照的だ。  国際線のロビーから出てきたマルコの前に黒いレクサスが止まる。後部座席が開き、テンションの高い声が長いフライトを終えた男を迎えた。デンマークで会った時と全く変わらない格好をしている。 「ハイ、マルコ。久しぶりのアトランタはどう?」 「合同演習でアメリカ自体は何度か来てたけどな。アトランタは初めてだ」 「あれ?そうだっけ?」  専門分野あれば抜群の記憶力を発揮するくせに、ベッキーのマルコに対する情報はあやふやだ。マルコは非難しなかった。強烈なハグの後、問いかけた。   「どうしてここなんだ?」  ヴォルカニックの本社はシンガポールにある。法人税が浮くからだ。アムリタのメインサーバも当然東南アジアにあるとマルコは思っていた。  ベッキーの鼻がふふんと鳴る。 「所詮クラウドサービスだからね。世界中にあるデータセンターのどれがマスターなのかは自由自在よ。アムリタは今、たまたまアトランタにいるとでも言っておくわ」  マルコは返事を口の奥で転がした。 (〝ある〟ではなく、〝いる〟……か)     
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