アムリタの告白(1)

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 マルコの視界にオレンジの街灯が入っては流れていく。足元にある荷物はボストンバッグ一つだけだ。長期間いるつもりはさらさらなかった。もう、人の多いところで暮らせる自信がない。  レクサスはルート85をひたすらに北上する。ジョージア水族館を過ぎた頃、ベッキーが「あ、しまった。どうしよう」とこぼした。 「どうした?」 「大したことじゃないんだけど、アムリタにあなたを引き合わせる話を社長に入れ忘れたの。このまま正面玄関から入ると記録が残っちゃうなーって思って」 「またか」 「社長は時々妙に神経質なの。報告怠るとヘソ曲げるのよね」 「君が大雑把だって発想は?」 「言うわね」  ベッキーがにたりと笑う頃、街のワンブロックを全てビルにしたヴォルカニックの正門を横切る。運転手は行き先を確認しなかった。心得ているとばかりにアクセルを踏み込んでいる。  連れてこられたのは、意外な場所だった。 「アトランタ駅?」 「そ」  MARTAレッドラインおよびゴールドラインが乗り入れる駅だ。国際空港と通じている。だったら最初から電車でくればよかっただろうに。言いたかったが道中のことを思い出し、マルコは文句を飲み込んだ。  ベッキーは手ぶらで車を降りる。「手荷物だけでいいわよ」と言うので、聖書だけを取り出して残りは車に置いていった。ホテルに運んでくれるらしい。     
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