アムリタの告白(1)

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 正直に告白すれば、マルコはベッキーに担がれているのだろうとタカをくくっていた。ライト・デイの後、収容されたリハビリセンターでよくドッキリのターゲットにされたのだ。よく覚えている。ベッキーは昔から、ちょっと空気が読めないところがある。天才の副次的な性格なのかもしれない。 「しかし、手の込んだことを…」 「光栄です」  どこにマイクがあるのかはわからないが、アムリタにマルコの声は筒抜けになっているらしい。  さすがに最新鋭のAIでもマルコが胸に抱いているベッキーへの感情は読み取れなかった。アムリタは滔々と「手の込んだ」部屋の解説を始めた。 「アムリタの部屋には無数の〝実態のないスクリーン〟が用意されています。ホログラフィックライブのためです」  ホログラフ。光の性質を利用した投影技術のことである。映像は映画のように平面へ映すことが全てではない。投射角度を変え、ハーフミラーを用いることで光の通り道は変わる。空間にいきなり立体の像が現れたように見える演出だ。エンターテイメント業界からも注目されている。 「従来のホログラフィックライブにはハーフミラーが必要でした。ユーザーには限られた位置、つまり、指定客席から映像を見ていただく必要があったのです。ですがヴォルカニックの開発した技術は狙いすました空間にだけガスを噴出することでハーフミラーの代替をどこにでも作り上げることができます。物理的な障害はございません」     
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