アムリタの告白(1)

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 マルコは暗闇色に染まった天幕に〝見える〟ものに触れた。確かに、布の感触はない。火傷を負った手に冷えた空気が触れただけだった。 「加えて密度の表現も格段に向上しました。故に、ヴォルカニックはユーザーを別の世界に連れて行くことができます」  アムリタはそう結論づけた。  刹那に、水しぶきが上がる。  マルコは海に浮かんでいた。今しがた水面に上がったところだった。 「な…っ」  --両脇を首長竜の群が抜けていく。  大きさは象ほどで、水を?くことに特化した四肢がゆったりと動いている。差し込む西日が眩しいのか、目を眇めるものもいる。トカゲ然とした目には、悠然とした光が灯っていた。  雲が橙色に染まっている。遠くに見える岸に並ぶ岩に波がぶつかり、白く砕ける。  潮の香りがないことだけが、マルコに「これは現実ではない」と伝えていた。 「今のはフタバスズキリュウ 。日本の福井県で発見された首長竜です。標本は東京にある国立科学博物館で見ることができますよ。アトランタからは直行便を使って13時間の距離です」  テレビの電源を落としたように唐突な暗闇が戻ってくる。今どこに立っているのかもわからない。ホログラフィックを見せられたことで闇に慣れていた目は元に戻ってしまった。 「楽しんでいただけましたでしょうか。他にもお見せできますよ?」  得意げな声だ。     
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