アムリタの告白(1)

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 マルコは口走るように尋ねた。 「君を…見ることはできるのか?」  行きの飛行機を待つ間、マルコはヴォルカニックのホームページを確認した。アムリタの紹介ページだ。サービスのイメージを伝える写真とロゴマークが掲載されていた。ロゴは、左右対称に枝を伸ばす「生命の樹」がモチーフに採用されている。  だがこんな部屋にいるのだ。  他にもデザインを与えられているのではないか? 「…。…」  アムリタは沈黙した。処理に困っていると伝えるには十分な間だった。  マルコは急いで己の言葉を取り下げた。 「失礼。ベッキーが君の開発に携わっているのなら、もしかしてと思ったんだ」  機械に心は宿らない。心のないものを、人は愛しきれない。  マルコの祖父は日本人だった。度々、故郷のことを聞かせてくれたが、その中に付喪神の話がある。日本では物を大切に使うと、魂が宿り、喜んだり悲しんだりできるようになるという。  「本当に?」幼いマルコの質問に対する答えは、「いいや。心があって欲しいと人が願っているだけだ」であった。  AIを開発するエンジニアにできるのも、心があるように見せかけることだ。     
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