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マルコは口走るように尋ねた。
「君を…見ることはできるのか?」
行きの飛行機を待つ間、マルコはヴォルカニックのホームページを確認した。アムリタの紹介ページだ。サービスのイメージを伝える写真とロゴマークが掲載されていた。ロゴは、左右対称に枝を伸ばす「生命の樹」がモチーフに採用されている。
だがこんな部屋にいるのだ。
他にもデザインを与えられているのではないか?
「…。…」
アムリタは沈黙した。処理に困っていると伝えるには十分な間だった。
マルコは急いで己の言葉を取り下げた。
「失礼。ベッキーが君の開発に携わっているのなら、もしかしてと思ったんだ」
機械に心は宿らない。心のないものを、人は愛しきれない。
マルコの祖父は日本人だった。度々、故郷のことを聞かせてくれたが、その中に付喪神の話がある。日本では物を大切に使うと、魂が宿り、喜んだり悲しんだりできるようになるという。
「本当に?」幼いマルコの質問に対する答えは、「いいや。心があって欲しいと人が願っているだけだ」であった。
AIを開発するエンジニアにできるのも、心があるように見せかけることだ。
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