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アムリタは奇妙なまでに瞬きをしない。自分にしか見えない文字を読み上げるように、朗々と続ける。先ほどの狼狽振りが嘘のようだった。
「溜まったマイレージは何に使われますか?お使いのアメックスは半年後に有効期限が切れます。クレジットカード番号は…」
「もういい!!」
緑の瞳から逃れるようにマルコは踵を返した。
滅茶苦茶に走ったつもりだったが、本当に運良く出口を見つけることができた。
「ベッキーッ!!」
部屋に飛び込んできた黒衣の男を、のんびりとした声が迎えた。
「意外に早かったわね。アムリタはちゃんとお話しできた?」
「どう言うことだ!!」
元・猟兵部隊の剣幕もどこ吹く風だ。ベッキーはコーヒーメーカーを駆動させる。
「どうもこうも、全てが事実よ。あの子は実在する。肉体を持っている。でも、ヴォルカニックが提供するAIサービス、アムリタのコアでもある」
「神様…嘘だと言ってくれ」
「ハハハ、神父姿のあなたが言うとそれっぽいかも。映画俳優みたいよ。格好いい」
「話を逸らすな!!」
落ちたカップは割れなかった。水たまりを作っただけだ。香ばしい香りが床から上がってくる。
マルコはベッキーの目を睨み続けた。瞳の中には鬼のような形相の己が映っている。
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