アムリタの告白(1)

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「アンブローは失血が止まらなかったし、リタの脳はもう使い物にならないほど損傷していた。どちらに先にお迎えの天使がくるか、と言った状態だったわ。でもね…病院にいたのは私だけではなかった。あの日私が参加していたカンファレンスはね、国際生体医工学会の年間会合だったのよ」 「!!」  機械、電子、生物、情報。命をより長く、健康に維持するための研究に人生を捧げた研究者達が一堂に会する日に、21世紀最初の対人核爆弾が起動した。  喉がひどく乾く。マルコは己の手が濡れていることに気がついた。血が、滲んでいる。 「ベッキー…!!」 「私たちは迅速にプランを立て、実行したわ。途中、残念ながら手術開始から12時間後にリタの脳死も確定、その後、アンブローの脳を移植したけれど、それでもダメだった」 「頼む…嘘だと言ってくれ…」  マルコの祈りを断ち切るように、ベッキーは落ち着き払った声で断言した。 「けれど、最終的には成功したわ。リタの頭に入ったアンブローの脳は脳死状態に陥ったけれど、アクセラレータ……人によってはグロースハッキングシステム(Growth Hacking System)と呼んでいるかな?とにかく、私の開発した人工脳機能群、MUTE(ミュート)が埋めこまれたことで生命活動を再開した」  妹の体の中に兄の脳が入り、さらにシステムが動かす。 「だからあの子の正式名称は全員の名前をとってアンブロー・ミュート・リタ。長ったらしいので略してアムリタよ」     
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