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「殺されている。ライト・デイの前週に。警察が兄妹を保護しようと必死に探していた矢先のことだった」
歌うようにベッキーは続けた。
「アンブローは快活な少年で地元のサッカークラブに入っていた。ポジションはデイフェンダーで、キャプテン候補にも上がっていたわ。対するリタは学校に行けていない。人見知りが激しく、無理強いをするとすぐに癇癪を起こしたそうよ。すべすべした額に常にシワを作っている陰鬱な少女だった。でも、仲はよかった。病院に搬送されて来たときも、欠けた体を埋め合うようにくっついていた……」
「どう、今のアムリタと比べて?」と念押される。
マルコは押し黙った。
思い出されるのは、先ほど見たアムリタの自信なさげな作り笑いだ。話したいのだけれど、上手くいくのかわからない。でも話して見たい。そんな期待と不安が折り重なった表情。
アンブローだったならば、もっと元気に話すのだろう。
リタだったならば、そもそもマルコの前に姿を表さない。
「…ミュートはどうなんだ?」
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