アムリタの告白(2)

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「読んで字のごとくよ。私の開発したシステムは、従来のAIと同じで感情を持っていない。やっているのは、アムリタの思念をネットワークとリンクさせること。もっと具体的に言えばあの子のバイオインフォメーションを吸い上げヴォルカニックのサーバに送り、逆にヴォルカニックのサーバが導き出した処理結果をあの子の脳にあるレシーバーに直に与えている」  これで航空機やクレジットカードの件も合点がいく。  マルコは静かに結論づけた。疑問はたくさん残っているが、ひとまずつけることにした。 「アムリタは手術後に生まれた新しい人格である」 「そう言っていいわ。今日までアンブローやリタに繋がる言動は確認されていない。自分の姿が写っている写真を見ても、反応しなかった」 「……」  整えてきたつもりの髪は、ひどく乱れている。マルコは声なく問いかけた。  その人格は一体、どこから来たのだ?  辿れば一体、誰に繋がっているものなんだ?  もしも、彼と彼女とあれがごた混ぜに出来たものなのだとしたら…。 「それは、本当に人間なのか?」  マルコは尋ねた。  裏を返せば、自分では断言できなかった。   「定義いかんね」  ベッキーは寂しそうに微笑んで、薄いブラックコーヒーを含んだ。 □ 「大体ね、アムリタをAIと呼んでいいかも怪しいのよ」  エンジニアは言葉の定義に厳しい。用語統制が取れていないコーディング作業ほど、難航するものはないことをよく知っているからだ。 「コンピュータだけを使って人間の脳の機能を実現するものをAIと呼ぶならば、アムリタは違う」     
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