アムリタの告白(2)

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 ベッキーは閉じられたままの扉を一瞥した。正確にはその奥にある、何でも作り出せる夢の部屋を盗み見たのかもしれなかった。 「時々思うんだけど、アムリタは技術が追いつく前の世界がイメージしていたAIに近い気がするの。人間のように見えて、人間とちゃんと会話が出来て、人間以上の能力を発揮する。でも、やっぱりどこか人間味がない。そういうものじゃない?映画や小説に出てくるAIって」  マルコは同意を求めてくる暗い色の瞳のその奥に、ベッキーが何か言いたがっていると直感した。   記憶を辿れば、何回も見たものだ。アムステルダム郊外のリハビリセンターで二人が一番やったことは脱走と議論だったのだから。 「仮説を持っているな?」 「えへ、ばれた?」 「君は話したくてウズウズしている時、鼻の穴がひくつく」 「ちょっと!!それは墓まで持ってってよ!本人の前で言うとかデリカシーないわね!!」  ベッキーはバシンと一発マルコの肩を叩く。ご明察であることは否定しなかった。 「アムリタの反応が私たちに近づいたのは、やっぱり体があるからだと思う」  呟くように、システムエンジニアは切り出した。     
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