アムリタの告白(2)

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 アムリタの体に埋まっているミュートは、心拍数や血圧をはじめとし、あらゆる体内を吸い上げてヴォルカニックのサーバに送る。故にわかったことだとシステムエンジニアは告げた。  リタの体がアムリタとして目覚めてからそう立たないうちに、とある実験が行われたのだ。人工知能ミュート単体とアムリタで判断能力の比較を行う。テストユーザーの相談を受け、三つの選択肢から回答案を出すというものだ。  アムリタと単体のミュートはテストユーザーの様子をカメラで捉えていた。テストユーザーに顔をわざと曇らせるよう指示してから結果は、……回を重ねるごとに変わっていったという。 「並行してアムリタの体温が下がり、呼吸が細かくなり、コルチゾール濃度が上がっていったわ。不安を覚えた証拠ね」 「直感係数の、正体か」 「イエスよ。肉体の反応は、間違いなく脳機能に影響する。スポーツ科学では脳の調子を整えて体のパフォーマンスを最大限に引き上げる取り組みが流行っているけど、こちらの考え方はヴァイス・ヴァーサ(「逆もまた然り」)ね。脳が引き起こした体の不調・好調は、結局また脳機能に帰ってくるの。それが人間の不規則で複雑な行動原理を作る一助になっている」  マルコの喉まで反論の言葉がせり上がる。 「マルコ。人の脳の正体は人の体と繋がったもの、なのよ。当たり前だけどね。その真理を……人工知能は追従しなくてはならない」     
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