アムリタの告白(2)

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 本当に?だから?だったら?言い返すバリエーションはいくつかあったが、結局黙った。口の固い男はペラペラと思ったことを言わない。ただ、渋い顔で考えるだけだ。  ベッキーはマルコの変化に気づかず、喋り続ける。 「それとね、クラウドサービスとしてのアムリタはやはりあの子自身なの」 「…なんだって?」  信じがたい話だ。  どうやっているのか、想像もつかない。 「脳の機能の一部をミュートが担っているおかげね。アムリタはクラウドサービスサーバと情報のやり取りが出来るのよ。ヴォルカニックが提供するAIサービス・アムリタとはスレッドで動く、いわばあの子のコピーとの会話。夜3時には回答内容……分身の記憶といったほうがいいかもしれないわね、…が同期される」  ベッキーは無料のベンディングマシーンからマグカップの蓋にできそうなほど大きいクッキーを取り出した。四つに割る仕草は、マルコには昔死んだ祖父が「センベー」を食べる時の癖を思い出させた。   「あの子は知識を爆発的に増やしていっている。何もかもが白い見た目をしているからってわけじゃないけど、まさにこの世に降り立った神様みたいよ」 「無神論者だろ?」 「『みたい』、って言ったじゃない。まあ、実際はいつも心許なさそうだけれど。知識を持っていても、実体験がないからかしらね」  マルコはベッキーの放った言葉を口の奥で咀嚼する。     
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