アムリタの告白(2)

8/27

8人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
 熟考するには十分な時間を開けてから、尋ねた。 「……あの子がミュートを外して生きることはできないのか?」 「ハハ、聞くと思った」  ベッキーはクシャと顔を歪めた。そして告げた。 「無理よ。残念ながらね」  兄弟とはいえ、他人の脳を移植するのだ。矛盾はいくらでも生じる。  性別の差もある。脳下垂体の持つ機能は男女で一部違うのだ。生理、果ては妊娠のために必要な女性ホルモンを分泌する。  さらに悪いことにアンブローの脳は呼吸や体温調整といった人間の基本的な生命活動を司る箇所から死んでいった。だから、ミュートを外せばアムリタは生きることができない。 「勿論、ミュートも万能じゃないからアンブローの脳の完全代替はできない。そうやって補完された脳はリタの体がないと活動ができない。使い方は違うけど、そう、アムリタは三位一体の存在なのよ」  ため息が出た。  ベッキーは「気になるんでしょ?」と頭を傾ける。 「アムリタがヴォルカニックのサーバーを介して生きているという事実が」  マルコははぐらかさなかった。 「……ああ」 〝われわれは神のうちに行き、動き、存在している〟  使徒行伝17-28だ。人の上に立つものは、神だけである。故に人は神の前に皆平等になる。     
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加