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アムリタは。人の作ったクラウドサーバに接続されていなければ成立しない人格は。神の下にいるのか。それとも人の下にいるのか。
今まで見聞きしたもののどこが腑に落ちていないのかを理解しようとしている。だんだん落ち着いてきたといってもいい。
マルコの目元に普段よりもさらに酷い影が降りる。
「やっぱり…」
「やめた方がいいわ、マルコ」
ベッキーは手のひらを見せた。血行だけは良く見える、手だ。
本当は冷たいことをマルコは知っている。
「あなたが今言おうとしていることは、とても残酷よ。既に結果が生まれているもの。あの子は普通に心臓が動いていて、感受性も豊かなんだから」
茶化した口調でベッキーは尋ねた。
「それとも今から告げに行く?君は生まれなかった方がよかったって」
□
ホログラフィックライブシステムは稼動を続けている。アムリタの部屋は依然大きさを知ることができない状態であった。見えるのは、白亜紀の海でも半日前マルコが発った島でもなく、カラフルなベッドルームだ。暗闇の中にポカリと浮かんでいる。
ちょうど部屋を半分に割ったようなそれは、ドールハウスのようにもドラマのセットのようにも見えた。
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