アムリタの告白(1)

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 「ライト・デイ」と名付けられた大災厄。マルコとベッキーは同じ場所にいた。  久しぶりの家族旅行で、学会のカンファレンスで。 「あれから8年経ってるのね。……アムステルダムには?」 「一度も行ってない」 「そっか。私なんかは毎年呼ばれているんだけど」 「あのヴォルカニックの最年少役員かつ、ライト・デイの生存者だぞ。呼びたがるに決まってる」 「ああもう、普通にシステムエンジニアって呼んでくれた方が楽なのに。肩ひじ張るの、嫌いなのよ」  確かに、とマルコは内心頷いた。ベッキーの格好は代弁している。エンジニアらしいラフなファッションだ。オフィスの床に直座りし、マックブックの中のプログラムを走らせる姿がよく似合う。  ベッキーは見た目に頓着しない。まさかこの格好のまま全世界中継されるセレモニーに出てたんじゃないか。マルコは一瞬危惧したが、流石にドレス・コードくらい理解しているだろうと思い直した。  大学生とも間違えそうな服装の女性はIT分野のフラッグ企業・ヴォルカニックに、さらに言えばその中核に所属しているのだから。 「そろそろ本題に入ったらどうだ。忙しいんだろう?」     
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