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笹野は小さく笑うと、穂花の側にさらに近づく。そしてなにも言わずに、穂花の瞳をじっと見下ろした。穂花は笹野を見上げながら、激しく鳴る鼓動を必死に抑えながら、精一杯の言葉を絞り出す。
「……今度の祭りで、ラムネ、一緒に飲みたい」
笹野は目を丸くして、くしゃりと大きな笑顔を浮かべた。
「……おう」
カナカナカナカナ……
夏の音に包まれて、二人の手がしっかりと繋がれる。小さな恋の物語は、あの夏の日、この場所からすでに始まっていたのだった。
了
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