4章 黒い目

3/22
85人が本棚に入れています
本棚に追加
/99ページ
 真っ直ぐにお菓子コーナーに向かい、付属の玩具がついているお菓子の箱を物色している達生をすぐに見つけた。 「おい帰るぞ」  声をかけてもお菓子コーナーから動かない達生の袖を掴み陳列棚から引っぺがす。 「あっ」  引っ張った拍子に達生が持っていたお菓子の箱は手から落ちてしまう。俺は苛々しながら「ったく、なにやってんだよ。ドンくさいな」と腰を屈めて取り上げた。 「……だって……欲しいんだもん」  小さな声で抗議はするもののひどく遠慮がちなのは、俺が養ってやっているのを子供ながらに理解しての事らしい。 「毎日買ってらんねぇんだよ、また明日な」  拾ったお菓子の箱を元に場所に戻す。多分、俺の一日分の煙草を減らせば買えない額ではない。そのうち禁煙するかなぁと考えていたら服の裾を達生の手が引っ張ってくる。
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!