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伸ばしっぱなしの長いボサボサの髪に、まだ幼さの残る双方の黒目が涙で濡れていた。
(でっけー目………)
俺は思わず見とれるかのよう、数秒、口をつぐむ。
大きな目に形の良い赤い唇、顎のラインは華奢でとても整った顔をしていた。
(こんな美形、ここに居たか?)
訝しげな顔をしている俺に福澤先生はにこやかに答える。
「ああ、そう、矢口さんはまだ紹介されてなかったわね。この子は柏達生くんっていって一週間ほど前からここで働いてもらっているのよ」
ああ、そうなんだ、と納得したけど。
(なんだこいつ)
さっきから紹介された張本人が疑心に満ちた目付きで俺を睨むように見ているのだ。
「はぁ……そうなんですか…」
なるべくそいつは無視するように二人に近づいてゆく。みるみる達生の顔が強張ってゆくのが分かった。
二人の前に立つと「それよりもお困りですか、先生?」先ほどから掴まれたままの腕を指差す。
「たたちゃんがダダをこねて、ね」
福澤先生は皺のある、だけどもなぜか醜いとは感じない頬を緩ませて笑う。
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