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「え? それは本気で言っているの?」
福澤先生は目を見張らせて、もう一度俺に確認をしてくる。
「……はい」
俺は言いにくそうに、けれどもはっきり強く頷く。
「…そう、そうなの…本気なの……」
福澤先生が悩む時に必ずする動作が、頬に手を当てて考え込む仕草だ。それを俺の前でして、それっきり先生は黙りこんでしまう。
気まずい沈黙に後ろめたさを感じて項垂れる他ない。
休憩時間に俺は中庭に居た福澤先生を呼び止めて、昨晩から考えていたことを打ち明けることにした。
達生を引き取ったのはいいが、やはり一緒に暮らして行く自信はない、と。
「分かったわ………たたちゃんの事は無理を承知で矢口さんにお願いしたことだから、仕方ないとして…せめて理由だけは教えてくれないかしら?」
突然の申し入れに関わらず彼女は素早く気持ちを切り替えたらしく、すぐに柔和な目元は失意を打ち消す
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