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携帯を取り出すと荻野に電話をした。どうしても、荻野に会わなくちゃいけないとそう思ったのだ。
「もしもし、荻野?うん、少し会える?いや、違う……そうか、駅前なら……ああ、構わないよ」
駅前のファミレスに荻野を呼び出した。呼び出しておいて、なんで呼び出したのか分からなくなり言葉に詰まった。
「珍しいやつから、珍しい救難信号が出てたから来たんだけど。何?俺の顔眺めて、それだけで解決しちゃった?」
にっと荻野が笑う。この男のはずだった、この男が俺は欲しかったはずなのだ。あんな一年の生意気なガキじゃない。それなのに何かが違う、違ってしまった。
「悪い、俺どうかしてたらしい。疲れてんのかな」
「別に、人間らしくていいじゃん、お前いつもカッコつけすぎなんだよ。もう少し、自分のことにも必死になってみれば?」
用が済んだようだから帰るよと荻野は出ていった。コーヒー一杯で勘弁してやると笑いながら。体育館であいつは待っていると言っていた、そこに答えがあるのなら行くべきなのだろうと思った。
仕方ない答えがわからないなら、見つけるだけだ。
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