初恋のはずだった

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    ……ああ、毎日がつまらない。    組み敷く予定だった相手は、なぜか他の男の尻ばかり追いかけている。二人に付き合っていると嬉しそうに報告を受けたが、賭けても良い、あの二人はまだ手を繋ぐのが精一杯のはず。  そのうちきっと俺にもチャンスがと信じていた、ところが遅々として進まないはずの二人の関係はだんだんと色っぽい方向へ動ているようで、荻野は常に尻尾振って、恋人について歩いてやがる。またかよと、その荻野の背中を睨んでいたら突然声をかけられた。  「近藤先輩?ですよね」  「あ゛?」  「お久しぶりです、中学でほんの少しの間でしたが、一緒にバスケやってました。覚えてます?溝内です」  みぞうち?……ミゾウチ?名前を何度か反芻したが、思いだせない。  「自分、夏には転校して。バスケ一緒に出来たのはひと月半なんですけど、またこの街に戻ってくることになって、その手続きに……ここで会うなんて、やっぱ運命ですかね?」  「何の話だ?」  「睨んでます?あれ、おっかしいなあ。喜んでもらえるはずなのになあ」   …………?  「お前何言ってんだ?意味わかんね。退け、そこ じ ゃ ま だ!」  「んんっ?おっかしいなあ。予定外のことに驚いてますけれど」    「だから邪魔だ、俺は運命も感じないし。嬉しくもない、分かったか」  「やっぱ、先輩の目……怒ると最高に色っぽい」  朝から不快だったのに、さらにまたむかむかしてきた。今日はもう帰ろう、授業に出ても何も聞こえない、これは帰れと言う神の啓示だ。
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