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初恋のはずだった
「ね、近藤ってさ、ミナト中だよね?試合で何度か会った、覚えてる?」
何か特別な事を言われたわけじゃない、それなのにその瞬間に落ちた。一目惚れは本当にあったんだ。
「あれ、違うのか?俺の勘違いだった?」
ああ、声まで好みだ。
「あ、いや。そうだけど、ごめん……すぐに思い出せなくて」
こいつを組み敷いて、喘がせてみたい。灰色の高校生活、何も期待していなかったのに、面白いものは何もないと思っていたのに、熱い風が肌を撫で上げていく。
「そっか、俺は身長もバスケ選手としては小さいし、記憶に残らないかもな。多分十センチは俺より背、高いよね」
あははと笑う綺麗なその顔を歪めてみたい。そんなことを考えていたら、あいつは「また部活で」と目の前から消えていった。
何故だろう高校で同じ部活に偶然入ったあいつ、ほとんど知らない相手に恋をしてしまった。
もともと女性は駄目だった、けれど男が好きだったわけでもなかった。取り敢えず試してみようと、女も男もどちらも試してみた結果、自分は人間が嫌いなんだと結論づけた。
そう荻野に会うまでは。
ところが、肝心のその相手は、ほかのノンケにご執心。
失恋すればいいのに、俺が慰めてやるのに。そう思っていたけど結局失恋したのは俺だった。
ものすごくそそるその男は、横やりを入れる俺に対して「馬にけられて死んでしまえ!」と本気で思っているらしい。
なあ、どうしたらあいつ貰えんのかな。
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