眠りたい僕と、眠たい彼

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(あさっては萌恵も休みって言ってたっけ。映画にでも……連れて、いこうかな。あいつがねだっていた、ケーキ……バイキングと……いう手もある、か。それとも冬物の、コートを……選び……に…………)  恋人と過ごす週末のプランを模索しながら、僕は必死にあくびを噛み殺していた。  電車に乗って気がゆるんだせいか、強烈な眠気が襲ってきたのだ。暖房の効いている車内。体に伝わる心地よい揺れ。徹夜続きの体に、この状況は心地が良すぎる。 「…………はっ!」  スマートフォンを取り落としそうになり、あわてて指先に力を入れた。  以前、寝過ごして終着駅で乗客に起こされるという恥ずかしい体験をした僕は、以来、二度と電車内で眠るものかと決心しているのだ。    眠気覚ましに水でも飲もうと、鞄からペットボトルを取り出した時。電車が次の駅に停車した。ドアが開いても乗客が出入りする気配はなかったのだが、発車のベルが鳴ると同時に乗り込んできた人が、僕の真横にどすんと座った。 (えっ!?)
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