先生の指先が奏でる私の音

1/25
28人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ

先生の指先が奏でる私の音

「緊張する……」 音楽準備室の前で立ち止まり、大きく深呼吸をする。 「合唱祭の伴奏者を務める予定だった上級生が入院することになり、一ノ瀬に伴奏をお願いすることになった」と、担任から言われたのはつい今朝のこと。 合唱祭はこの学園のメイン行事で、例年一人の伴奏者が、全ての学年の合唱曲の伴奏を務めるというのが決まりになっている。 指揮者は音楽教師が務め、毎年伴奏者は放課後みっちりと指導されるらしい。 選ばれたのは、とても光栄なことだ。でも、本当に私で大丈夫なんだろうか。 音楽の桐山先生はとても厳しい先生として有名で、伴奏者は毎日泣きながら帰るんだと聞く。 幼い頃から続けてきたピアノに自信がないわけじゃないけれど、やっぱり心配になってしまう。 でも桐山先生に授業以外で会えるなら、引き受ける以外の選択肢なんてなかった。 だって私は入学式で一目惚れしてからこの一年、ずっと思い続けてきたんだから。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!