先生の指先が奏でる私の音

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*** 大きな拍手がホールを包む。 指揮をしていた先生の方を見ると、口元だけ上げて先生は笑った。 「指揮 桐山拓未、伴奏 一ノ瀬椿」 名前がコールされると、一際大きな拍手が鳴る。 私は深々と頭を下げながら、込み上げる涙を我慢するのに必死だった。 私にとって三度目の合唱祭。 一緒に『Mandarin orange』を無事弾き終えたという安堵、それからやり遂げたという気持ちを思い出し胸が震える。 「また泣いてる。もう何回も見たんじゃなかったの?」 先生は苦笑いしながら、人差し指で私の涙をそっと拭う。 卒業式を終えた私は、先生のマンションで合唱祭のDVDを見ていた。 「だって今年も先生と演奏できたんだなって思うと」 「そうだね、二人にとっても最後の『Mandarin orange』だと思うと、感慨深いね」 先生は学園の理事長の推薦もあり、春からは新設の音楽専門学校で講師として働くことになっている。 「感動に浸るのもいいんだけど、僕としてはあの時の続きをしたいと思っているんだけどな。もう先生はやめてくれる?」
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